【微忙録】

明日の自分への覚え書き

ib-インスタントバレット-

ib ?インスタントバレット?(1) 世界の終わりとボーイ・ミーツ・ガール (電撃コミックスNEXT)


ib-インスタントバレット-(01) 世界の終わりとボーイ・ミーツ・ガール

著:赤坂アカ
掲載誌:電撃マオウ
既刊:5巻(完結)
読んだ日:2018/03/12〜16

 

あらすじ

世界を憎む者に発現する異能、「ib-インスタントバレット-」。20人の少年少女にもたらされたこの力は
世界を滅ぼすのは誰なのか。

 

登場人物

 

深瀬クロ

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敵。
喧嘩をすることでしか相手とコミュニケーションが取れない。
厭世家であり、二次元に逃避しつつある。
彼の持つ「創造」のibは、彼の心理を具現化する。

姫浦瀬良

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ヒーロー。
幼い頃から他人の悲しみに理解・共感ができない。
悪を悪だと認識できない。
正義を正義だと認識できない、生まれながらの悪。
彼女の持つ「破壊」のibは、世界中のありとあらゆる爆弾を支配下に置く。

 

総括

何もない、何者でもない人たちが、何かになりたがる話。

姫浦セラは、他者の感情に共感を持てない。
正義が何かを理解したくても、最愛の父の死ですら悲しみの感情が湧かなかった。
自分の感情は揺らぐことはなく、他者から疎まれることでのみ自分の生を実感することができる。これを彼女自身は「悪の資質」と評する。

セラはヒーローになれない。
ヒーローになるためには敵の存在が不可欠である。
悪の資質を持って生まれたセラから見れば、自分以上の悪は存在しないからだ。

悪の彼女はは悪らしく、悪として振る舞う。
ヒーローとしてのクロに打ち倒されるために。


深瀬クロは、世界に価値を見いだせない。
周りからは悪魔と呼ばれ、疎まれる存在。
共にいてくれるのは、幻の姉妹だけのひとりぼっち。

そんな彼もibを持つ仲間と呼べるような、救いたい、報われて欲しい人ができた。彼らと接するにつれ、少しずつだが幸せとは何なのか解りはじめる。

幸せを知るにつれて、彼は世界に対しての憎しみを募らせる。
それは、世界の誰も幸せを分け与えてくれなかったことに。世界の誰も、自分が今まで手に入れられなかったそれを、当たり前のように、ありがたみもなく享受していることに。
そして、ようやく手に入れた自分の小さな幸せも、世界がやがて奪い去っていくことに。

結局こんな世界など必要がない、とセラと対峙する。
セラを超える悪として、ヒーローセラの敵として。


結局自分以上の悪は見つからず、ヒーローになることを諦め、悪に徹するセラ。
自分の目的は世界を壊すことで、自分を止められるのはセラしかいないと悪になるクロ。

「ヒーローってのはなりたいときになるものだ」

セラが初めてクロに出会った時の言葉が、クロからセラに返ってくる。
自分にはそれが一番無理なことだと分かっていたセラだが、ずっと見つからなかった自分以上の悪を前に、セラは、

「悪でも正義になれますか?」

と世界に問う。


「ああ、やっと見つけた、私の敵」

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こういった最初の頃の掛け合いを、関係性が変わった後に繰り返す手法は、珍しいものでもないが、非常に効果的だ。最初からこの終わりを想定してから話を組んだのか、それともこの話を作っていく過程で自然にキャラクターから発生したものなのか、どちらにせよ巧みな展開の作り方であると思う。

何が正義で何が悪か、正義と悪の二元論。

善悪を問いかける作品は、作家ごとの哲学性が表れてきて興味深い。
この作品に関しては、正義よりも悪に焦点を向けている。

打ち切りと相まって、終盤は作者が書きたい言葉を詰め込んでしまって、キャラクターがどういった心境でセリフを発しているのか、少々希薄になってしまっていたように感じる。作者の表現したいものに対して、物語の長さが不足しているというのがひしひしと伝わる。

まだまだ描くことがたくさんあるんだ、という赤坂先生のメッセージが感じられる。
そう思ってカバー裏を見てみると、先生の隠しあとがきが載っている。案の定ibは、高校生の頃からライフワークのように構想を練り続けた物語だったという。

使い捨ての弾丸(インスタントバレット)とは、誰にとっての使い捨て、何へ向けての弾丸だっただろうか。

 

なお、登場人物はこの二人だけではない。

 

深瀬十色、いろは姉妹。

藤波木陰、諸木亮太

そしてヒロインの魔女さん。

 

彼らについて語られる章については今回は意図的に触れていない。クロとセラ同様に、彼らには彼らの事情、思惑、意思がある。

私が文字に起こすとどうにもチープになってしまいそうなので、気になった方は読んで確かめてほしい。